3.2.1
校 長 伊 豫 田 祥 子
碧高ニュース2020年度の最終号を電子版でお送りします。
1年間、新型コロナウイルス感染症に翻弄されました。中学校生活はどのようにできましたか。碧南高校では感染拡大予防を考えながら、実行したこと、延期したこと、中止したこと、様々です。
地域への貢献を目指す「碧南Kプロ」も碧南市内の行事中止が相次ぎ、校外での活動は極めて限られたものになりました。それでも商品開発講座の生徒たちの活動を各社が取材してくださりありがたい限りです。碧南市哲学たいけん村無我苑からお招きいただき、生徒12名がオンライン哲学対話を体験しました。この場を借りてお礼申し上げます。生徒たちには体験と思考を繰り返して大人になって欲しいと願っています。
日常生活ではマスクが必需品になりました。うっかりマスクを外したまま商店に入ったり、電車に乗ったり、などと周りを心配させたこともありましたが、注意してくださった方々、どうもありがとうございました。その度に校内に伝え、気を付けることを実行しようと広めています。
コロナ禍はまだ続きそうです。もしかしたら、新型コロナウイルスの方が、人間がうじゃうじゃいる世界に引きずり出されてうろたえているかも知れません。しかし、文明の中にいる人間社会が大混乱していることは確かです。直接には、生存の問題であり、それに伴う経済活動や道徳(あり方や生き方)の問題が顕在化しました。ICT化の施策と重なってリモートワークやオンライン学習が推奨されますが、生々しい触れ合いなくしてヒトの脳の成長がないことも明らかになりつつあります。とはいえ、高度に発達した文明社会の人間疎外から復活するために野生に戻るわけにもいきません。ひ弱になった文明人は厳しい自然の中で生き延びることも難しいはずです。
皆さんは、今後の人間社会の在り方がどうあるべきだと思いますか。時間の幅を地球の誕生に合わせると、生命の始まりについての疑問が生まれます。(話が大きすぎるならもう少し狭めて)霊長類の始まりと繁栄あたりなら、ゴリラやチンパンジーの社会を観察しながら人間社会の歴史を考えることもできそうです。
自分で考えるためには、何が必要でしょうか。知識も、考える技術も、経験も、感性も、話し相手も、…。
今回のタイトルを「新しい世界への期待」としたのは、まさにこの点にあります。皆さんが(私も)社会(と地球の運命)を作っていく力の幾ばくかは自分にもあるという自覚をもって将来を考え始めるのです。誰かがSNSに発信したことに対して深く検討もせずに「いいね」とリツイートすることはありませんか。それは危険です。考える材料を並べてあれこれ思案すること、材料がまだ足りないかもしれないと疑うこと、別の人はまったく違う考えを築くかもしれないと想像すること、もたもたしているようでも十分に吟味することができたら素晴らしい。新しい世界の形ではなく、あり方に希望を持っています。
私事ですが、60歳になりました。軽佻浮薄、浅慮、いくつになっても知恵の足りない自覚だけはありますが、もうじき退職です。学校に通うこと54年、1週間が長く感じられるときもありました。希望の見つからないときもありました。しかし、教員はありがたいもので生徒がいつもいてくれました。人のために何とかしなくてはいけないという気持ちが自分を奮い立たせてくれたのです。これまでに出会った皆様、これから出会う皆様、ご縁とご恩に感謝申し上げ、皆様のお幸せをお祈りしています。