2.12.1
校 長 伊 豫 田 祥 子
尊敬するかつての上司、ある校長先生の言葉を皆さんにプレゼントします。曰く、 「職場で仲良しグループを作ってはいけない」。どういうことか想像がつきますか。
テレビドラマの職場の場面や小説では「○○さん、××の件、□□お願いします。」という会話と同時に、「○○ちゃん、××よろしくね!」といった砕けた言い方もあります。私たち視聴者・読者は、登場人物の言葉遣いから誰と誰が親しく仲良しなのか理解する仕組みとなっているのです。
「仲良きことは美しきかな」(武者小路実篤)、「友だち100人できるかな」など、日本では友達を多く作り和やかに過ごすことに価値を置き、それを疑わない傾向があります。
その校長先生は、仲良しグループがあること自体にそれ以外の人の疎外、分け隔ての危険を察知し、また、意見の言えない、自由のない職場になることを憂慮されたのでした。
「好き嫌いをせず何でも食べましょう」と言われたことはありませんか。これは仏教から来ているようです。何も嫌わない、拒まないように努力するのはもちろん、「好き」も慎みます。好きは、ある特定のものへの執着であり、分け隔てそのものだからというのです。とはいえ、修行者でもない身でどこまで水準を高められましょうか。
Aさんとはウマが合う、Bさんといると妙に苛立つ、焼き芋は好きだけれどふかし芋は嫌い、そんなことはありませんか。「吾日に吾が身を三省す」あの孔子ですら自己チェックを欠かさなかったのです。無意識に、悪気なしに差別や偏見による言動をとったことはないか、いろいろな人のいろいろな立場や価値観を想像するように努力したか、自然に任せては困難なことだからこそ「仲良しグループ」をキーワードに自戒するのです。
皆さんの仲良しは外の世界に心を開いていますか。お互いの自由意思を大切にしていますか。